民事裁判・民事訴訟の流れ(不倫による浮気相手への慰謝料請求等)
裁判は訴える人である「原告」が、裁判所に訴状を提出することによって始まります。
これを「提訴」といいます。
よくテレビで聞き慣れた言葉ですね。
しかしながら、いざ、ご自分が係わることになると事は重大で専門的な事ばかりです。
相続に関する裁判、貸した金銭を返してもらうための裁判、不当解雇されたので復職したいなど、まさか自分が訴えたり、逆に訴えられたりする立場にになるとは想像もしてなかったことと思います。
そこで、一般的な民事裁判についてご説明いたします。
裁判所が郵送する中身
もし、貴方が訴えられた(被告)場合、裁判所から郵送で書類が送られて来ます。
この郵便物は同居の家族が受け取っても本人が受け取ったことになります。
被告にとってはここからが裁判のスタートになります。
裁判所の封筒の中には、などの書類が同封されています。
- 訴状
- 証拠書類(甲*号証)
- 口頭弁論期日呼出状及び答弁書催告状
- 「答弁書」の書き方
これは特別送達で郵送されますが、特別送達とは民事訴訟法に規定する方法により裁判所や公証役場から訴訟関係人などに送達すべき書類を送達し、その送達の事実を証明する郵便の特殊取扱の郵便物です。
訴状の中身
訴状には下記を明記しなければなりません。
以下、それぞれの意味についてご説明いたします。
- 当事者の表示
- 請求の趣旨(=慰謝料請求など請求したいこと)
- 請求の原因(=請求理由)
- 自分と訴える相手との関係
1.当事者の表示
裁判所に訴えをおこす側を「原告」訴えられた側を「被告」と呼びます。
被告というと悪人というイメージがありますが、そう呼ぶルールになっていますので、被告=悪人ではありません。
浮気相手に慰謝料請求裁判を起こした場合、訴える側の貴方が原告、浮気相手が被告という呼び方をします。
法廷では傍聴席から見て、左側が原告席、右側が被告席となります。
ちなみに、上記項目がはっきりしない場合「これじゃダメ」と却下される事もあるので注意が必要です。
裁判提訴は弁護士に依頼される方が安心です。
2.請求の趣旨
「被告は原告に対し500万円を支払え」といった事が記載されています。
これは、原告が裁判所に対して求めている判決の内容を記載したものです。
また、「訴訟費用は被告の負担とする」と記載されていますが、これは訴訟に係わった費用 を裁判で勝った側が負けた側に負担させるという意味です。
ここでの訴訟費用ですが、弁護士費用は含まれません。
一方、一部勝訴、敗訴というような場合は、負担割合を裁判所が決めます。
3.請求の原因
請求の趣旨では、「被告は原告に対し500万円を支払え」といった原告が被告に求めている結果しか書かれていませんが、請求の原因では、「500万円支払え」の根拠となる事実を記載します。
例えば「不貞行為をされて精神的苦痛を受けたため、500万円支払え」などを記載します。
しかしながら、請求の原因に書かれている不貞行為が真実であるがどうかは、これから始まる裁判で明らかにされるものであり、提訴した時点では裁判所が「事実」と認めたわけではありませんので、浮気を立証するものが必要となります。
証拠書類の必要性
ご自分が出してほしい判決、例えば浮気相手に対して慰謝料「200万円を支払え」という判決を勝ち取るためには、それを裏付ける証拠書類がないと勝てません。
原告側はその証拠書類を「甲第*号証」という名称で提出します。
逆に被告側(訴えられた側)の場合は、「乙第*号証」となります。
書類は裁判所に提出する正本と相手側に出す副本があります。
例えば、不貞行為を原因とした慰謝料請求裁判の場合、探偵社が作成した探偵調査報告書を証拠書類として提出すれば、不貞行為を立証することが可能になります。
もちろん報告書には性交渉を客観的に推認できるラブホテルの出入り写真や浮気相手の自宅の出入り写真(日付時刻入り)が必要です。
これらは人物特定できる写真でなければなりません。
その他、浮気相手とメールでやり取りしている画像、浮気相手からの手紙、外泊や帰宅時間のメモ、録音した音声等、探偵調査報告書があって初めて有力な証拠となります。
当然のことながら裁判は被告と原告それぞれの主張が食い違うため、裁判官は証拠や尋問によって判断します。
双方の主張が事実がどうかを判断し、その事実関係をもとに法律を適用して、原告がもとめた請求がどうかを裁判官が判断するため、証拠能力及び証拠の評価の説明が大切と言えます。
離婚を要求する夫がとった信じられない行動とは
弊社のご依頼者さまで実際にあった裁判をご紹介します。
浮気をしている夫は、妻に何度も離婚を要求していました。
しかし、妻は子供の影響を考え、離婚には応じませんでした。
妻は夫の浮気調査をして決定的な証拠を押さえ、浮気相手に慰謝料請求裁判をおこしました。
数度の公判後、夫は離婚したいために被告側(浮気相手)に立ち、驚く行動をしていましたそれは・・・
妻が自宅にいない時を見計らって部屋を汚し、炊事場には汚れた食器を山盛りにし、洗濯物を洗濯機から溢れるほど入れ、それらの写真を撮って裁判の証拠書類として提出したのです。
夫が何を主張しているかと言えば、
- 妻としての仕事を放棄しているめ、妻が原因で夫婦は破綻状態であった
- そのため、被告(浮気相手)に罪はない
ということです。
妻はとても几帳面な方で、むしろ妻として申し分のない家事をされていました。
しかし裁判官は夫の出した証拠をもとに判断するため、夫の主張を覆す必要が生じます。
このケースは、浮気調査の報告書と妻がつかんでいた1年前の浮気相手と夫のメールのやり取りから、夫の主張を覆すことができました。
何度も言うようですが、証拠が全てですね。
訴状受理後の流れ
訴状が受理されると、裁判所を経由して相手方に「特別送達」という方法で届けられます。
それに対して、今度は訴えられた人(被告)が「答弁書」という反論の書面を提出します。
その後はいよいよ双方が裁判所に出向き、法廷に立つことになります。
もちろん代理人である弁護士がいる場合は弁護士も出廷します。
法廷では最初に「弁論手続き」が行われ、原告・被告それぞれが言い分を主張すします。
弁論手続きという名目ですが、実際は書面でやり取りされることが多いようです。
次に「証拠調べ手続き」となり、証拠を調べ、証人を呼んでどちらの主張が正しいのかの裏づけが集められます。
最後に
もう一度「弁論手続き」となり、証拠調べの結果を踏まえた上で、再度原告、被告双方の主張となります。
ここまでの段階で双方が「和解」すると裁判はここで終了となり、裁判所が和解をすすめることもあります。
和解するとあとは調停とほぼ同じで「和解調書」を作成します。
(和解調書には、支払い方法や支払われなかった場合の損害金などこと細かく決められています)。
和解が成立しない場合は、「判決」を待つこととなり、原告・被告双方に判決正本が送られ、送付後、14日以内に控訴しなければ判決は確定します。
そうなると勝訴側は、強制執行などの手続きを取る事も可能になります。
以上が民事裁判(民事訴訟)の大まかな流れになります。
しかし判決が確定するのに、短いもので3ヶ月、長いものだと数年もかかることがあり、平均で1年位です。