婚姻費用を獲得するには

婚姻費用(生活費)を払わない別居中の夫に対して、分担請求する方法

「夫が生活費を払ってくれない・・」 でも大丈夫、あきらめないで!
法的に守られているので、今すぐ行動を起しましょう!

婚姻費用とは

夫婦が家庭生活を営んでゆくために必要な生活費です。(略称、「コンピ」とも言われます)
法律では、民法第760条

  • 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。

となっています。
具体的には、生活費、医療費、子どもの教育費などで、これが婚姻費用の分担義務です。

この民法第760条で言う婚姻とは、一組の男女が法律上、婚姻関係を結ぶ事を指します。

  • 男性は18歳、女性は16歳以上に達し、重婚や近親婚、女性が離婚後一定期間以上経過しているという要件を満たし、お互い合意に基づいて婚姻届を提出することにより、夫婦として成立します。

ちなみにその時から、夫婦は貞操義務を負います。

そのため、結婚によって夫婦となった後は、生活費(婚姻費用)及び生活に係わる一切を分担しなければなりません。

収入を得ている主たる配偶者は結婚生活のために、生活費(婚姻費用)を負担する義務を法律上負っています。

娯楽費も婚姻費用?

娯楽費も婚姻費用夫婦が生活するに当たり、どこまでが婚姻費用として認められるでしょうか。
ギャンブルや飲食費、高級ブランド品等は?そのような疑問が浮かびますね。

答えは、それらが度を超しているかどうかです。
もちろん個々の収入にもよりますので、身の丈にあった生活費になります。

とても抽象的ですが、度を超してなければ、ギャンブルや交際費、娯楽費等は婚姻費用として認められます。
法律では常識的な判断を基礎とします。

婚姻費用(生活費)の分担は金銭だけではない

働いている主たる配偶者だけが、婚姻費用の負担を背負っているのでしょうか。

そうではありません。

婚姻費用の分担とは、金銭だけではなく、家事や育児等の労働による分担も含まれます。

夫が金銭的な部分、妻が家事や育児を担当するケースが多いですね。

そこでもし、夫が金銭的なことを全て管理していて、妻に対して生活費を渡さない場合は、妻は夫に対して金銭的な婚姻費用を請求できます。

例えば、単身赴任や浮気等の原因で別居する場合は、夫と同じ生活水準の生活費を頂く権利が妻にはあります。

浮気がエスカレートすると生活費を入れなくなる

夫(妻)の浮気が進行するにつれ、以下のような経過をたどります。

  1. 帰宅時間が遅くなる
  2. 外泊をするようになる
  3. 別居をほのめかす
  4. 生活費を減額する
  5. 生活費を入れなくなる
  6. 別居する
  7. 離婚調停を申し立てる

プレゼントこのように、浮気相手との関係が深くなり、自分の家庭よりも浮気相手の方が大切に思うようになってしまうと、生活費を入れなくなってしまいます。

なぜなら浮気相手と過ごす時間が増え、食事代・ホテル代・プレゼント代他、自ずと金銭を消費するようになります。

そのような関係が続くと、次第に家庭のことが疎ましくなり、妻(夫)とは離れて暮らせば、自由に浮気相手と会えるため、別居する夫婦もあります。

別居をすれば二重生活になり、浮気相手には惜しみなく浪費し、生活費は払わなくなります。

家庭を犠牲にした挙げ句に浮気相手にお金を使うなんて、気持ちが収まりませんね!

その段階になって初めて「浮気」を疑う妻もおられますが、そのような場合は一刻も早く浮気調査をして、証拠を確保する必要があります。

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別居して生活費を払わなくなった場合、必要な情報は

夫が生活費を払わなくなった場合、ご自分とお子さまを守るために大切なことが2つあります。

  1. 別居先を知っておく
  2. 勤務先の把握

別居先を知らないと、いざ何かあった時には連絡が取れず、大変なことになりかねませんね。

しかし、浮気相手と同棲を計画していることが多く、妻(夫)には教えないことの方が多いです。

「婚姻費用の分担請求」をして家庭裁判所調停で決まるか審判が下った場合、今後、担保できるものがないと逃げられる可能性があります。

その場合は支払いを確保しなければなりませんが、その有力な情報としては勤務先です。

給料から強制的に支払ってもらうために、勤務先の把握は大切なことです。
中には婚姻費を払いたくないために、仕事を簡単に辞める人もいます。

上記が不明な場合は、弊社にご相談ください。
別居先の所在調査・勤務先調査を実施すれば判明します。最短1日で判明します。

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夫が婚姻費用(生活費)を払わない場合は

夫が生活費(婚姻費用)を払わない場合は、それを請求する権利があります。

そのため、夫に対して支払っていただけるように働きかけましょう。

家庭裁判所に「婚姻費用の分担請求調停」を申し立てる

夫に話し合いで生活費を請求しても十分支払われないような場合は、家庭裁判所の調停や審判に委ねる方法があります。

婚姻費用や養育費に関して、調停で不成立(合意できない)となっても、自動的に審判手続が開始され、裁判官が一切の事情を考慮して審判をすることになります。

そのため、他の調停とはことなり、調停不成立→裁判の申し立てとならないため、時間的に早い段階で婚姻費用の支払いが決定されます。

一方、当面の生活費に窮して緊急を要する場合、家庭裁判所に上申書を提出すると、

  • 調停前の保全処分
  • 審判前の保全処分

として、調停や審判成立までの生活費を支払うように勧告、命じるよう求めることができます。

  • 調停前の保全処分

は生活費の支払いを家庭裁判所が命じてくれます。
ただし強制力・執行力はありません。

しかし、この命令に従わなければ、「10万円以下の過料」という制裁が課せられるため(家事審判法28条2項)、効果があります。

一方、

  • 審判前の仮処分

が認められれば強制執行力があり、「当面、この金額を婚姻費用として支払え」と命令が出されます。

浮気して出て行った妻に婚姻費用を払わなければならないか?

妻が浮気をした挙げ句に家を出て行き、夫に対して生活費(婚姻費用)を請求してきた場合はどうなるでしょうか。

結論は、通常の生活費の額よりも減額される可能性があります。

別居の原因が

  • 生活費を請求する側に別居の原因となった責任がある場合

にのみ、減額されます。

という事は、例え浮気をして家を出て行った妻に対して、気持ち的には生活費を支払いたくありませんが、法的には生活費の額は減額されるものの、夫婦である以上は生活費を支払わなければならないということです。

稼ぎがある夫は、生活費を支払う義務者となります。

ただし、夫のDVや夫と同居していると精神的に病気になるという理由の場合は、

  • 一方的に別居しても、正当な理由であれば婚姻費用を受け取ることができる

とされています。

婚姻費用獲得の具体策

生活費を既に払って頂けない方と、これから別居や離婚の可能性があり生活費を頂けるか否か心配な方の二通りが有ると思いますが、ここでは支払っていただけない方や減額された方についてご説明いたします。

一刻も早く婚姻費用を請求した証拠を残す

婚姻費用を請求した時点から支払いが認められる可能性が極めて高いため、請求した事実を証拠として残しましょう。

言いかえれば、過去(請求以前)の婚姻費用を獲得することは難しいため、一刻も早く請求することで少しでも多く獲得することができるわけです。

その請求の事実を残す方法は2通りあります。

  1. 内容証明郵便で請求する。
  2. 家庭裁判所に「婚姻費用の分担請求調停」を申し立てる。

「内容証明郵便」は法的文書の1つで、あなたと相手側のみならず、郵便局にも保管されるため、婚姻費用を請求したという証拠が残ります。

内容証明郵便内容証明郵便は

  1. いつ
  2. 誰が
  3. 誰に対して
  4. どんな内容の請求を行ったか

の証拠となるため、後々調停や審判の手続になった段階や、過去の婚姻費用の精算するというような場合に大きな効果が期待できます。

もう1つは、家庭裁判所に「婚姻費用の分担請求調停」を申し立てます。
札幌家庭裁判所の受付は1階にあります。

そこで事情を話せば、親切に対応していただけます。

婚姻費用分担請求事案調停の利点は、たとえ双方の話し合いが不成立となっても、自動的に審判に移行するので、比較的早く結論が出されます。

そのため裁判に移行するようなことはありません。

「婚姻費用の分担請求」の申し立ての仕方

お住まい管轄の家庭裁判所に申立を行います。
申立書には基本的に下記の5種類があります。

  1. 婚姻費用分担請求申立書(3通)
  2. 事情説明書1通
  3. 連絡先等の届出書1通
  4. 進行に関する照会回答書1通
  5. 非開示希望申出書1通

また、必要書類として、

  • 夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)1通(申立人と相手方が内縁関係の場合は不要)
    ※過去3ヶ月以内に発行されたもの

書類の記入は難しくありませんが記録として残るため、正確に記入しましょう。
用紙は札幌家庭裁判所のwebページから印刷することができます。

申立て費用

  • 収入印紙 1200円
  • 手続用の切手90円 × 1枚
  • 80円 × 6枚
  • 50円 × 1枚
  • 10円 × 6枚

合計で1,880円です。(札幌家庭裁判所の場合。2013年2月)

その他、申立時に用意するもの 収入がわかる書類

  • 源泉徴収票
  • 給与所得者であればその明細書
  • 確定申告書
  • 課税証明書等

給与明細書の場合は、賞与や期末手当等の臨時収入が含まれないため、年収がわかる源泉徴収票や課税証明書等が良いでしょう。

その他特別な費用に関する書類(私立学校の授業料など)

注意

提出する書類は、すべてA4の用紙に、2通コピー(裁判所用、相手方用)して提出します。
一応、ご自分用にもう一部コピーしましょう。

以上の手続を行えば、あなたは婚姻費用の分担請求手続を法的に行ったと言えます。

【札幌家庭裁判所 家事受付係】

電話番号(011-221-7281)
〒060-0042 札幌市中央区大通西12丁目

調停や審判での取り決めに従わない場合は

婚姻費用や養育費支払が滞った場合は、強制的に支払ってもらわなければなりません。

これから離婚の可能性がある方や、滞る可能性のある方は以下のような方法があることを知っておけば、現段階から準備できます。

  1. 履行勧告
    この制度は、家庭裁判所から夫に対して取決めを守るように「説得」や「勧告」しますが、法律的な強制力はありません。この手続に費用はかかりません。
  2. 強制執行
    上記1の「履行勧告」でも夫が生活費を支払わない場合は、「強制履行」を裁判所に請求する権利があり、強制的に支払をさせる事ができます。

また、強制執行には「直接強制」「代替執行」「間接強制」の三通りがあります。

婚姻費用や扶養義務の強制執行は直接強制や間接強制が一般的です。

直接強制とは

これは国家権力によって発動されるもので、債務者の意思とは関係なく執行機関が債務者の財産に直接権力を加えて、給付内容の実現を図ります。(民法414条1項)
具体的には預貯金、不動産の引渡等です。

間接強制とは

債務者に婚姻費用の支払いを命じて、経済的・心理的圧迫を加えて、自発的な支払を促し、給付の履行を強制することです。

代替執行とは

債務者がその債務を任意に履行しない場合、第三者に債務者のなすべき行為を行わせ、その費用を債務者から取り立てる方法です。

例えば、建物を収去する義務を債務者が履行しない時、債権者は第三者に建物を収去させ、その費用を債務者から取り立てるなどです。

婚姻費用・養育費の受け取りが有利に!

2004年には、民事執行法の第4款

  • 債権及びその他の財産権に対する強制執行

が付け加えられ、婚姻費用や養育費などにおいて支払が滞った場合、将来の支払うべき金銭においても強制執行が可能となりました。

これは一度強制執行の手続をすれば、将来にわたり給与から天引きすることができます。
差し押さえることのできる金額も、給与の1/2まで可能となり、他の債権の1/4までよりも優遇されています。

これから別居の可能性がある方

収入、固定的な支出を把握する

相手の給与明細、振込銀行の入出金履歴をコピーしましょう。
基本的に別居前の生活水準を保てる生活費を頂く権利があります。

また、恒常的な出費も生活する上で大事な要素となりますので、把握する必要があります。

預金通帳等をコピーする

預金通帳等は金銭の履歴の重要な証拠となります。
万が一、収入をごまかされた場合はこのコピーが証拠となりますので、押さえておく必要があります。

誓約書

相手方に支払続けていただくための圧力になり、支払という意思の証明にもなります。
できれば連帯保証人を付けていただければよいでしょう。

また、勤務先が変わった場合の通知義務や、支払が滞った場合に強制的に給与を押さえることを認諾するという条項も忘れずに。

しかし、相手側に誠意がない場合は、ただの紙切れとしての価値しかありません。
法的に強制執行力をもたせるため、公正証書に残す必要があります。

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